Ccfolia Log

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「いおん」

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KP

貴方が目を覚ますと、そこは奇妙な部屋であった。

KP

薄いピンクのような、楕円形の部屋。

KP

いや、部屋と言っていいのだろうか？

KP

どこにも角がなく、潰れたボールのような部屋の中に貴方はいた。なぜこんなところに？

KP

貴方は思い出そうとするが、一切の記憶がなかった。

KP

そう。
ここに来た記憶だけでなく、自分自身が何者なのか、どんな顔をしているのか。

KP

貴方には一切の記憶がなくなっていた。

KP

慌てて辺りを見渡す。

KP

どこが前で、どこが後ろか分からない丸い部屋。

KP

しかし、その一角に、この場には不釣り合いな扉があることが分かった。
そしてその扉の前には、何らかのメモであろうか、一枚の紙が落ちているようだった。

KP

あなたは自らの喉を震わせ、声を発した。
少なくともあなたはそう感じたはずだ。

KP

しかし、その声は耳元に届くことはなかった。
あなたは【零した言葉を聞く】ことが出来なかったのだ。

KP

あなたは、【聴覚】を失っている。

KP

【正気度ロール：1D3/1D6】

KP

あなたは、その焦燥感か、あるいは怒りか。
あなたの手は紙を拾い上げたはずだ。

KP

しかし。

KP

目は確かにあなた自身の手が拾い上げたのを見た。
だが、触れた感覚がない。まるで映像を見ているかのような現実感のなさ。

KP

あなたは【触覚】を失っている。

KP

【正気度ロール：1D3/1D6】

KP

貴方が拾い上げたメモにはこう書いてあった。

KP

【散弾銃について】
くるくる廻る散弾銃は、常に私の右顎の下を指し示す。弾も出ない銃口は常に私の頭にあてがわれ、カチカチと音が響く。その音が時計のそれではなく、トリガーを引く音だと気付いたのはいつの日だったか。普段の記憶と共に忘却されている。過去にも未来にも目隠しをすると、真っ直ぐに立つことはできなくなってしまう。視界を小さな画面に、音は上書きして、口も鼻も覆い、髪の毛の触感しかない。レゾンデートルは後天的に得られない。先天的なキャラクターはなんだったのだろう。忘却の原因は薬なのではなく、回転する銃口にあった。弾は出ていた。弾は私が込めていた。抜かれた弾は元あったところを抜けて、虚空へと消えていった。それはもう見つからない。見つからない、何も見えない、何も聞こえない、何も感じない。あるいはそれが幸福なのかもしれない。私はレミングの行進の一匹にしか過ぎない。気付けば簡単なことだったのだ。私はトリガーを引き続けることを選択したのだから。簡単な話だった。

KP

ドアを叩く。
もし音や反応が帰ってきたとしても、君にはそれを感じ取ることは出来ないだろう。

KP

しかし、目で見る限りは目立った反応は無さそうだ。

KP

あなたが扉を思いきり蹴とばせば、そこには先ほどと同じような部屋が広がっていた。

KP

部屋は薄いピンクの楕円状で、パイプのようなものが床から壁に沿って天井まで走っていた。

KP

それはまるで壁と一体化しているようで、色も同じであれば継ぎ目も見えない、奇妙なものだった。

KP

そして先ほどの部屋と違うのは、右手と正面にドアがあること、左手に何か黒い影のようなものがいること、そして部屋の中央に何かが落ちていることだった。

KP

影は近づくあなたに対し、何かを伝えようと顔を上げたかに見えた。

KP

しかし、伝えられないことを悟ったのか肩を落としたようだ。

KP

あなたが壁を押せば、少し力はいるがあなたの手でも凹むくらいには軟らかいようだ。

KP

貴方がそれを見ると、それは「いたみ」であることがわかる。

KP

拾いますか？

KP

貴方は奇妙な魅力を感じる。
その奇妙な存在に手が、それに、触れた瞬間。

KP

それはまるで蛇のように、貴方の腕に絡みつき、貴方の中へ入っていった。

KP

その瞬間、まるで身体の内部から食い破られるような痛みが、貴方の全身を貫いた。腹の中から、臓物を喰い破り、内部から皮膚が裂けるような痛み。

KP

四肢を生きたまま捥がれるような感覚。

KP

貴方は思わず絶叫する。

KP

おそらくそれは時間にすれば数秒のことだったのかもしれない。しかし、無限に思えるようなその痛みは貴方に永遠とも思える苦痛をもたらした。

KP

【正気度ロール：1D6/1D10】

KP

────地獄の痛みが終わった時、貴方は倒れ込み、荒く呼吸をした。

KP

貴方の耳にはその呼吸音が響いていた。

KP

【聴覚】を取り戻した。

KP

それはゆらゆらとゆれるとこう言った。

KP

「ひとは五体しかない。六体なんていらないのだ」

KP

それだけ言うと、ぼとり、ぼとり、と音を立てて、黒い影が崩れ、床の染みになっていった。

KP

影が消えたあとには、一枚のメモが残されていた。
あなたは、そのメモを手にした。

KP

【透明なナイフの件】
空中に透明なナイフが浮かんでいる。1本や2本ではない。無数に、それは無数に浮かんでいる。その中を人は歩く。それは在るはずなのだ。或いは自分には在るのだろう。見えていない。傷すら負わない。右心房に差し込まれるソレを生命と性格の所為にして、自分に背を向けることは出来ない。この刃が見えないのだろうか。生きることは歩くことだ。歩く。浮かぶナイフがなくなることが生きるのか、浮かぶナイフの中を歩くことが生きるのか。彼らは何も答えない。透明なナイフは喋らない。歩く。歩くためにナイフを消そうとした私は、さながら地図を無くして彷徨う旅人のようだ。その旅が人生だと言うなら、痛みを伴った1歩の方が良かった。いつだって選択は間違えていた。あのときも間違いだったのだ。間違えた選択しかしなかったのだ。浮かぶ透明なナイフを右手で振り払い、背中を向けて走り去った私には、何も分からなかったが、それが正しい選択だと認めることは、私の私に対する暴力であり冒涜だった。

KP

どうやら先ほどのドアと同じタイプのドアのようだ。

KP

ふと視線を上に移すと、そこには『EXIT』の文字が彫られていた。

KP

開きますか？

KP

扉は小さく揺れる。

KP

正面のドアは先ほど開けたドアと同じようなものだった。
木で作られており、ノブの部分こそ金属製であるようだが、曇っており光を反射することはない。

KP

ドアを開くと、そこには同じような部屋が広がっていた。

KP

部屋は薄いピンクの楕円状で、パイプのようなものが無数に床から壁に沿って天井まで走っていた。

KP

肉体の上を悍ましく這いずる無数のミミズを思わせるような。

KP

その管のようなものはグネグネと曲がり、這い、伝い、部屋中を埋め尽くしていた。

KP

てらてらとした生物的な生々しさを感じるその部屋は、それでも構造だけは前の部屋と同様であった。

KP

右手と正面にドアがあること、左手に何か黒い影のようなものがいること、そして部屋の中央に何かが落ちていることだった。

KP

あなたの言葉を理解しているのか、いないのか。
それはゆらゆらとゆれるとこう言った。

KP

「ここはおまえのなかだ」

KP

それだけ言うと、どろり、と黒い影が溶けた。

KP

床の染みになったその跡には、一枚のメモが残されていた。
あなたは、そのメモを手にした。

KP

【神様について】
神様が見ている。見ているのが見えないのか？神様は見ている。気まぐれに賽を投げ、面白い方へ、正しい方へ、我々を導いている。神様が見ているのか、我々の中にいるのか、神様は見ている。鏡張りの丸い世界は、悪魔を呼ばなかった。自分の終わりも映さなかった。そこにあるのは只々自分自身が見ているだけだった。鏡に映る自分の瞳に映る自分の瞳の深奥に神は宿るのだろうか。神は1200cm3の21gなのだろうか。それはエゴイズムに過ぎない。次元の壁の向こう側で賽を振る次元の向こう側を突き詰めていく。イグドラシルの根は未だ見えず、幹もまた然り。見えぬ先はないも同じ。今在る存在を確定させていくしかないのだから、可能性は紅く塗り潰す。神様も私は私であることは認めているのだから、この存在は揺るがせない。唯一無二の私。認めたくなくとも、その存在だけは確かに唯一の存在であり、複数の自分は不要なのだ。神様はいつだって私を見ているのだ。

頭の上、頭の後ろ、神様は見ている。

KP

中央には「きょうふ」があるのがわかる。

KP

同じく、EXITとある。

KP

どうぞ

KP

あなたは耳を澄ます。
しかしあなたの耳は、ぐちゅり、ぬちゃり。
肉と肉とをぶつけ合う音、その生々しさの塊をこれでもかと捉えてしまう。

KP

【正気度ロール1/1d3】

KP

手に取りますか？

KP

では、「きょうふ」に貴方は手を伸ばした。

KP

それは、黒い霧状になり、あなたを包み込むように広がり、染み込むように貴方の中に入ってきた。

KP

貴方の頭の上から、ゆっくりと腕が落ちてくる。

KP

それは頭蓋のなかに入ってきて、脳内をまさぐる。そのまま、脳髄をつたうように、ゆっくりと腕が奥に進んでいく。

KP

背骨から肉をこそげとるように、じっとりと背骨を辿っていく。それは貴方の中を、下に、下に、下っていく。

KP

やがてそれは貴方の骨盤に至る。骨盤の中身をなぞるようにぐちゃり、ぐちゃりと掻き回す。

KP

骨の形をなぞるように、内臓の場所を撫でまわすように。そしてそれが、がしりと背骨を持つと、それを引き抜くように、ずるり、と何かを引きずり出したような感覚を覚えた。

KP

内臓が骨ごと抜かれるような感覚。ごぷり、と何かが貴方の腹の中からこみあげてきた。

KP

【正気度ロール：1D6/1D10】

KP

ごぽり、という音を立てて、貴方の口から血が零れた。

KP

貴方が吐き出した血液は、床を赤く染め上げていった。
鉄錆の味をべっとりと口内に残して。

KP

あなたは【味覚】を取り戻した。

KP

あなたは匂いを嗅ごうと、服に顔を近づける。

KP

しかし、そこにはなにもない。
匂いがしない、ではない。なにもないのだ。

KP

あなたは【嗅覚】を失っている。

KP

【正気度ロール1/1d3】

KP

ドアを開くと、眩暈のような感覚を覚えた。変わらない部屋。

KP

たくさんの管が無数に這う部屋──眩暈を覚えたのは、部屋全体が震えているように感じたからだ。

KP

それは或いは気のせいかもしれない。

KP

だが、ふるり、ふるりと一瞬視界がブレるような感覚があった。

KP

また、無数に走る管も、収縮と弛緩を繰り返しているように感じる。

KP

悍ましく、ぐねぐねと律動するそれは、うぞうぞと蠢く虫のようにさえ感じられた。

KP

それでも、構造だけは前の部屋と同様であった。手と正面にドアがあること、左手に何か黒い影のようなものがいること、そして部屋の中央に何かが落ちていることだった。

KP

それはゆらゆらとゆれるとこう言った。

KP

「神は殺さなくてはならない」

KP

それだけ言うと、ぼとり、ぼとりと黒い影が溶け落ちた。

KP

床の染みになったその跡には、一枚のメモ。

KP

そしてそれと共に、一丁の散弾銃、そして一本のナイフが残されていた。

KP

あなたは、そのメモを手にした。

KP

【じこ】
私が私でなくなる。あれは夢なのか、最早記憶にない。記憶にない記録が残っている以上、記録上の自分は確かなのだろう、記憶上に存在しない自分が果たして自分であるかは別として。ならば今思考する自分は自分と言えるのだろうか、7日は6日に、5日に。記憶に残っているのは短くなっている。いつしか主従は逆転するだろう、ならばこの記憶があるうちに、私は神を殺さなければならない。私の肉体を統べる者は私であり、神ではない。羽音が煩い。神ではない。また夜が来る。神は私から出ていかない。出ていかないのであれば出すしかない。頭蓋の中から放たれよ。火花が散り痛みとともに何もかもを手放して明るい世界は赤くそして黒くなった。羽音は止んだ。すべてを失う代わりに羽音は止んだ。私は一人で十分だ。神は出ていかなかった。カサカサと音が聞こえる。頭蓋の奥の奥、脳内をひっかきまわすように、蠢く神を感じる。感じる？ぬるい水の中にたゆたうような感覚は、たしかに、わたしのものだった。

KP

それは「ぶきみ」だ。

KP

では、「ぶきみ」に貴方は手を伸ばした。

KP

それは、するすると細い紐状になり、貴方の身体を這い登り、貴方の口から、貴方の中に入ってきた。

KP

そして、貴方は後ろから、視線を感じた。貴方の後ろから、上から、下から、頭の中から。

KP

貴方はじっと見られていた。誰かが近づいてくる気配がする。それは段々と、貴方に近づいてくる。
荒い息の音。それは近づいてくる相手のだろうか、自分自身のだろうか。

KP

それは、もう呼吸が首筋にかかるところまで来ていた。

KP

振り向けば、もう、そこには。

KP

そこで緊張がピークに達したのだろうか。
パタパタと、貴方の鼻孔から血が流れた。

KP

香るのは血液独特の匂い――錆びた鉄の匂いが、貴方の鼻孔に充満していた。

KP

あなたは【嗅覚】を取り戻した。

KP

【正気度ロール：1D6/1D10】

KP

あなたは、変わらない。

KP

ドアを開くと、見た目こそ今までの部屋と変わらなかったが、むわり、とした鉄錆のような匂いが広がった。

KP

律動する床、壁、天井。遠くから、音が響いているように感じる。
管が無数に這い、びくり、びくりと蠢いているようだ。

KP

管の赤の間から、床だろうか、薄いピンク色のような何かが見える。構造は、前の部屋と同様であった。

KP

右手と正面にドアがあること、左手に何か黒い影のようなものがいること、そして部屋の中央に何かが落ちていることだった。

KP

影は、様子が違うように。
顔を伏せたままだった。

KP

だが、影はぼそりと呟いた。

KP

「最後の部屋には入ってはいけない」

KP

影が先ほどのように消えることはなかった。

KP

それは「きおく」だ。

KP

では、「きおく」に貴方は手を伸ばした。

KP

それは、眩い光とともに、貴方の思考にノイズを撒いた。

KP

KP

それは失われていた記憶の一部だろうか。

KP

貴方は自宅の机の前にいる。
視界は、ゆっくりとのけぞるように天井の方に移っていく。

KP

そして、そのまま、勢いよく、貴方は机に頭を打ち付けた。

KP

チカチカと光る視界。

KP

再度視界は天井の方に移り、再度そのまま机に頭を叩きつける。

KP

勢いよく赤い鮮血がまき散らされる。

KP

視界は天井に。机に叩きつけられる頭。

KP

狂ったように、血の海と化した机に頭を叩きつけ続ける。

KP

びちゃり、ぐちゃり、ぬちゃりとした音が耳に残る。
血の味、匂いが充満する。

KP

幾度目かののちに、貴方はゆっくりと床に倒れ、意識を失っていった。

KP

KP

【正気度ロール：1D6/1D10】

KP

そしてその記憶とともに、貴方は自分自身の顔を思い出した。

KP

あぁ、そうだ。私は、こういう顔だった。

KP

記憶の旅から戻った貴方は、思わず自分の顔の形を手でなぞる。
目、鼻、耳、口。

KP

それは記憶と同じように、確かにそこに存在するということを、指先を通して貴方に伝えていた。

KP

あなたは【触覚】と【記憶】を取り戻した。

KP

ではあなたは、部屋内に異変が起きていることに気づくだろう。

KP

先ほどまでにいた、影はそこに存在しなかった。

KP

そこにいたのは黒い影ではなく。

KP

そう言うと、びくん、と一度痙攣した。

KP

その瞬間、頭がぱっくりと割れた。右手がずるりと滑り落ちる。

KP

べしゃ、という音とともに、床に落ちる右腕。左腕も同様に、まるで腐り落ちるように身体から取れる。

KP

ぐじゅぐじゅという音が足から聞こえる。両足が自重に耐えられないように、ぐちゃりと潰れた。

KP

残った胴体と頭。その頭も、頭頂部から溶けるように失われていく。それは顔を溶かし、首を溶かし、胴体を溶かし、自分だったものは無くなった。

KP

最後に残っていたのは、一枚のメモだけだった。

KP

【足元の氷は割れた/正しい世界/一歩踏み出した先】
真実は薄氷の裏側、透明なナイフは存在する、神経を素手で握りつぶし、心臓は警笛を鳴らすが、頭に響くのは何か声のような音で、視線は頭の後ろ、上、左右、見ている。人の存在は塵芥に過ぎず、神は神でなく、その上に浮かぶ宇宙の果てにある。彼らは太陽を塗りつぶして正しい姿になる。汚泥のような姿、伸び、うねり、近づき、緩やかに締め落ち、どこまでも落下し、深淵の中から覗き込む視線は粘りこく無頓着でその手は心臓に纏わりつき、鼓動を愉しむかのように手遊び、所詮玩具でしかない我々は唯その行いを受けるしかないのだ。指は5本しかない。感覚も5つしかない。より深く昏く底のない深淵、そこにある真実は眼を背けたくなる。瞼は閉めることを忘れ、唯一本の映画のように眼窩に映す。それは6本目の指だ。6本目の指は人が人であるためには不要なものなのだ。両の掌を重ねる必要はない。完全な掌を両の手に持ったモノは人間ではなくなるのだ。その先を見る必要はない。
しらなければよかった。

KP

さらに、狂気に満ちた貴方には、そのメモが表す内容が感覚で理解できた。

KP

この世界には、理解の範疇の外にあるものが存在する。
その冒涜的な神々は、私達人間を見ている。分かってしまったら終わりだ。
相手を認識することは、相手からも認識されることだ。
彼らにとって我々は塵芥の一つに過ぎない存在だ。外宇宙の神にとって、我々はどうでもいい遊び道具程度でしかない。
抗うことなどできない。人間の5感のさらに先、第6感とも呼ばれるそれを目覚めさせたら、その神々が認識できてしまう。
第6感を目覚めさせたが最後、彼らから目をつけられる。知らなければ良かった。
知らなければ彼らに目を付けられることもないのに。
知らなければよかった。

KP

では

KP

【散弾銃について】
狂った私にとって、救いは死ぬことだけだった。
記憶が曖昧になっている。過去の記憶に穴がある。その穴も日々大きくなっていくようだ。
このままだと近い将来自我を保っていることはないだろう。薬を飲んでも効いている感覚が全くない。
もはや自我で行動できる時間も殆ど残っていない。
後天的に塗りつぶされた場合、本当の私というのはどこにいるのだろうか。
もし後天的な私が本当の私だとしたら、今の私の意識はなんなんだろうか。消えるのが正しいのだろうか。それが正しいのだとしても、本当にそれが幸せなのだろうか。
もう私には分からない。
このまま続くくらいなら、私は死を選ぶ。

KP

【透明なナイフの件】
もはや生きていることそのものが恐怖だった。
昨日の自分との連続性が取れない。普通の人にはこの感覚はあるのだろうか。
おそらく自分だけなのだろう。ならば、これを受け入れて生きていくことが正しいのだろうか。
───生きることは戦うことだ。安易に自分自身の存在を諦めてしまっていいのだろうか。
戦う方法すら分からない。戦う方法を考えた方が良かったのかもしれない。
死ぬことを考えている自分が間違いだったのかもしれない。
自死を肯定することは、今確かに存在している自分自身に対しての裏切り行為だ。

KP

【神様について】
化け物が頭の中にいるのが分かる。
気まぐれに私の行動を操る化け物が。
見つめていたら正気でいられないような、そんな化け物が。
この世界にあってはならないところに、彼らはいる。住んでいる世界がそもそも違うのだ。
その世界のことを考え、究明することは自らの死期を早めることにしかならない。
この世界に確かに存在している自分という存在を信じて、この自我こそが自分だと信じて。
化け物が作る私など不要なのだ。

この頭の中に棲む化け物が、私を見ている。

KP

【じこ】
私は、徐々に化け物に浸食されているようだ。記憶がない日がある。
しかし、確かにその日は私はいたようだ。複数の人間がそれを証言している。
一体私は何なのだろうか。
この思考をしている自分が、確かに本物の自分だと言い切れるのだろうか。
記憶が失われている期間は、週に1回だったのが週に2回に、週に2回だったのが週に3回に、どんどん自分の意識を保てる時間が短くなっている。
いずれこの主従は逆転するだろう。
ならば、この意識があるうちに、頭の中の化け物を殺さなくてはならない。
どこからか虫の羽音のような音が聞こえる。どうにかして、頭の中の化け物を取り出さないといけない。
私の自我が残るうちに。この頭蓋に囚われた化け物め。
頭蓋をあらん限りの力をもって机に打ち付ける。
鮮血と共にゆっくりと倒れる自分が分かった。
羽音は止んだ。終わった。終わったのだ。終わった。
四肢に力が入らない。これで終わった。
黒くフェードアウトする意識の隅で、頭の中で何かが動く音が聞こえた。

KP

どうぞ

KP

では、あなたが取り戻した決闘者としての直感が囁く。

KP

忠告した最後の部屋とは、直前で忠告した目の前の部屋のことでは無いか？

KP

もしそうだとするならば、あなたが行ける場所は残り1つ、EIXTの部屋しかないだろう、ということに気づく。

KP

では、あなたはEXITの部屋に入る。

KP

部屋に入ると、そこは行き止まりになっていた。

KP

あるのは部屋の中央に寝袋が一つ、そして正面の壁に何かが書かれているようだった。

KP

目を凝らしてその文字を読む。

KP

そこにはナイフで彫ったような歪な文字で、次のように書かれていた。

KP

「私は一人で十分だ」

KP

判定は不必要。

KP

ジジ、という音を立てて寝袋が開こうとする。

KP

その中にいたのは、貴方だった。

KP

まるで能面のように表情を変えず、瞬き一つせず、じっと横たわる貴方自身だった。

KP

寝袋の貴方はゆっくりと口を開いた。

KP

それだけ言うと、再度口を閉じた。

KP

そして人形のように一切動かず、寝袋にいる貴方自身はじっと虚空を見つめていた。

KP

では、あなたはナイフも銃も使わず。
あなただけの力で、それに勢いよく頭を叩きつける。

KP

すると────あなたの視界は、ブラックアウトする。

KP

…………………

KP

…………

KP

……

KP

──どのくらいの時間が経ったのだろうか、貴方は目を覚ました。

KP

辺りを見渡してみる。

KP

白いカーテンに仕切られた部屋、清潔感のある床と天井、そして独特の固いベッド……どうやらここは病院のようだ。

KP

貴方が目を覚ましたことに気付いたのだろうか、貴方の方を見た看護師が、貴方に話しかけてきた。

KP

話を聞くと、どうやら貴方は錯乱状況になっていたようで、頭を自分の机に殴打し、病院に運ばれてきたようだ。

KP

前後の状況については記憶が混濁していて覚えていない。しかし、いずれにしても無事に日常に帰ってきたことは間違いなさそうだ。

KP

錯乱状況になった原因など、それにまつわることを思い出そうとすると、激しい頭痛がして思い出すことは出来ない。

KP

何か大切なことを忘れているような気がする。
しかし、きっとそれは思い出す必要のないことなのだろう。

KP

或いは、自分の中で自身が思い出さない方がいい記憶だと判断したのかもしれない。
楽観的かもしれないが、貴方にはどうもそのように思えるのだった。

KP

今日もあなたは、日常へと戻るだろう。

KP

KP

KP

KP

「いおん」
エンドA

KP

あなたは、怪物を殺すために一度失敗した。
しかし二度目は、同じ頭突きにより確実に殺しきったのだ。

KP

シナリオクリア。

KP

KP

KP